英語の音声に関する雑記帳

英語の発音について徒然と


大学入試センター試験の“紙と鉛筆による発音問題”(第1問)について

周知のように、大学入試センター試験の「英語」には、今年からリスニングが導入された。これに伴って、従来の“紙と鉛筆による発音問題”は廃止されるのでは、という見方もあったようだ。しかし実際には出題された。

このことに関しては、リスニングはあくまでも受信能力で、この“発音問題”は発信に関する知識を測っていると考えれば、一応筋は通っている。また、リスニング部分を選抜に利用するかどうかについては各大学の裁量によるので、その辺も考慮の上でのことだろうか。

しかし、Bの文強勢の問題は良いとして、Aの語強勢の問題で、単語にアクセント符号をつけて選択肢としているのには疑問がある。アクセント符号は発音記号の一部をなすものであるから、これでは、発音記号が読めることを前提としていることになってしまう。

もっと言えば、photographs, ecological には第2強勢があるので、設問の「単語のアクセント(強勢)の位置が正しい組み合わせ」は問1にはないことになる。“第1アクセント(強勢)”とか“最も強いアクセント(強勢)”と言うべきだろう。

また、この問題を、文の中から抜き出した単語にする意味はあるのだろうか? record, present, separate のように品詞によって発音が変わる単語が出ているなら分かるが、出題されている単語には、そういったことは全くないからだ。これなら孤立単語を提示しておけば十分だ。

強いて言えば、ecological は出題中の ecological changes という句の中では、自然な発話なら stress shift を起こして語頭の ec- に第1アクセントが来る傾向がある。しかし、これが optional rule であるのを嫌ったか、選択肢の中には入っていない。英語を流暢に操る受験生の中には「正解がない!」と迷った者もいるかも知れない。

いずれにせよ、この「第1問」とリスニング問題の得点間の相関関係をきちんと出して公表してもらいたいものだ。もしも相関がないか、最悪負の相関が出るなら、「第1問」は英語力の測定という意味ではノイズになっているということだから、廃止するべきだろう。逆に、十分に高い正の相関があれば、続けてもいいということになる。どれくらいなら“十分”かの判断が難しいところではあるが…。

もちろんその他に、リスニング問題自体の内部相関性を計算して(設問を交互に取り出して2グループに分け、グループ間の相関を見る)、この問題に十分な信頼性があったのかどうかも確認しなければならない。これは今後リスニング問題の質を上げるために必ず必要なことだ。(いや、それを言えば、試験全体についてもそれが言えるが…。)

なお、機器のトラブルなどで425名が再試験となったことが問題視されているようだが、10万人単位の受験生がいる試験の中で、初めての実施であるにもかかわらずこの人数なら上出来だろう。試験室のスピーカーによる実施で、座席の位置による公平性に対する苦情や、周囲の予期せぬ雑音によって、部屋ごとやり直しを強いられたなら、恐らく再受験は千人単位で生じたと思われるから、大学入試センターの神経質とも言える措置は奏功したと言って良い。

もちろん、トラブルに巻き込まれた受験生にとっては、上出来どころではないだろう。まして、英語は全科目の最初に行われるので、トラブルのせいで平常心を失い、後の科目の出来にまで影響した受験生がいたことは想像に難くない。

そのようなリスクを最小限にするために、英語を2日目の最終時限に移しておくという発想は、大学入試センター側にはなかったのだろうか?英語はほとんど全ての受験生が受験するため、最初に配置しておくと、受験者数の発表が早くできるというメリットはあるのだろうが、逆に言うとそれ以外のメリットは感じられないからだ。来年以降、トラブルは減っても皆無には決してならないだろう。英語を最終時限に移すという措置を、来年から実施するということが考えられてもいいと思う。



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