もう旧聞に属することかも知れないが、ロンドン大学名誉教授 John Wells氏のブログによると、ロンドン大学の音声・言語学科は、今年の1月1日をもって解体されのだそうだ。
http://www.phon.ucl.ac.uk/home/wells/blog0801.htm
全学的な組織変更に伴うことなのだろう。この学科に所属していたスタッフのうち、音声学者は Research Department of Speech, Hearing and Phonetic Sciences(うまい訳語が見つからない…。「音声・聴覚・音声科学研究科」か?) に、音韻論研究者を含めた他の言語学者は言語学研究科(Research Department of Linguistics)に移管されたのだという。
今まで知らなかったのだが、音声・言語学科は、Survey of English Usage で有名な英語英文学科が所属する人文科学部(Faculty of Arts and Humanities)の中にあるのではなく、生命科学部(Faculty of Life Sciences)の所属であった。新しい組織では、 上記2つの研究科は生物医学・生命科学部(Faculty of Biomedical and Life Sciences)の中の、心理・言語科学部門(Division of Psychology and Language Sciences)の中に、含まれるそうだ。
研究科(research department)ってどういうことだろう。研究所みたいな形になって、学生を採らなくなってしまうなんてことはまさかないとは思うのだが。(もしも学生を採らないのだとしたら一大事だが。)
音声学が、言語学と分離して、speech/hearing と一緒になっているということは、医学的・工学的アプローチの傾向が強くなりそうな感じがする。世界の音声学の総本山的存在だったロンドン大学でのこの変革は、音声学の今後の進路に影響を与えずにはおかないだろう。あるいは、既に明らかになってきている、そういう方向への動きを反映しただけなのかも知れない。
ただ、今回の組織変更で、記述音声学的伝統が損なわれなければいいが、とは思う。もちろん、言語学と一緒だったとしてもそれが担保されるわけではないのだが、イギリスの音声学は、音声の現状の客観的・包括的な記述に熱心だという意味で貴重な存在だけに、気に懸かるのだ。
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