英語の音声に関する雑記帳

英語の発音について徒然と


『文レベルで徹底 英語発音トレーニング』における ɚ + ɚ(nearer, there are など)の扱い

ɚの後にɚが続くもの(nearerのような形容詞・副詞の比較級やlecturer のような動詞に-erが付いたもの、あるいはthere areのような単語連続)で単にɚが長くなるだけと踏み込んだ(用例284~285)のは、発音学習書ではもしかしたら僕が最初かも知れません。本書のために収録した音声はもちろん、辞書の電子版についている音声なども聞いた上で判断しました。

そもそも英語には子音rの次に母音ɚが来る単語(*prurt のようなもの)がありません。jの次にiが来るもの(yeast, yieldなど、実際には子音が摩擦音 ʝ になることが多い)、wの次にuが来るもの(woo, swoop)が存在するのとは対照をなします。

Merriam Webster Learner’s Dictionary (MWLD) では lecturer に ˈlɛktʃɚrɚという表記を与えていますが、これは表記のための表記になってしまっていると思います。もちろん僕が書いた『グランドセンチュリー英和辞典』第4版の léktʃərɚ にも同じ批判が成り立ちます。その他の英和辞典で léktʃ(ə)rər となっているようなものも、アメリカ音については同様です。

音素表記(区別すべき音の一覧を予め確定し、それに対応する記号のみを用いた表記)からは離れてしまいますが、ˈlektʃɚː のような表記の方が恐らく実際の発音を反映しているし、学習者が発音する助けになるでしょう。

日本ではあまり行われませんが、アメリカの発音教本ではi, uの後に他の母音が続く場合にわたり音j, wが入るという練習がよく含まれています。MWLDのagreeable /əˈgriːjəbəl/や arguably /ˈɑɚgjuwəbli/ のように辞書に記載されている場合もあります。

しかしこのようなわたり音のj, wはyeast, wooに現れる「元々存在する」j, wとは別物です。例えば bee-eaterやHe eats のようなi + i にわたり音として j (または摩擦音 ʝ)が入ることはありませんし、そのような表記も見かけません。ɚ + ɚ にrをはさむ表記が妥当でないのも、それと同じことなのだと言えるでしょう。



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