日本英文学会の『英文学研究』に、Geoff, Lindsey, English After RP: Standard British Pronunciation Today の書評を書きました。次のリンクから読むことができます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/elsjp/98/0/98_173/_article
『英文学研究』では和書は日本語、洋書は英語で書評を書くという決まりがあるため、これは英文です。以前このブログで書いたこの記事をきっかけに、内容を大幅に拡充しました。
1つ、記号一覧の ɒ に対応するstandard lexical set にlotだけを書いてclothを書くのを忘れたのですが、英音の議論では実害がないということで、お許しください。
もう1つ、この本の第7章で論じられている、/lt/の前のthought母音、/l/の前のgoat母音がlot母音に置き換わる傾向(salt /sɔːlt —> sɒlt/, goal /gəʊl —> gɒl/)にも触れた方がよかったかな、と今は思います。しかし締め切りもあり、他の仕事と並行しての執筆でもあったため、このように「語彙的」な内容を入れる前に音声的・音韻的な変化をまとめるだけで手一杯だったのでした。
しかしこの変化にも音声的な理由を見出すことはできます。「暗いL」が先行する後舌母音の対立を中和してしまう傾向の一部だと言えるでしょう。それは「母音の後のr 」が及ぼした影響と似ているかもしれません。
いずれにせよ、本書が出たことにより、RPは既に時代遅れであり、イギリス南部標準発音(SSB)こそが現代的なイギリス発音であるということが、手に届きやすい形で提示されました。まだこれをモデルとした発音教材は存在しませんが、遠くない将来にそれが現れることを期待したいと思います。
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