英語の音声に関する雑記帳

英語の発音について徒然と


wrong の比較級と最上級の発音

綴り字 <ng> の読み方は、語末で /ŋ/(king)、語中で /ŋɡ/(finger)である。但し、語中でも <~ng> で終わる単語に接尾辞が付いた場合(sing-er, long-ish)は /ŋ/ となる。しかし、形容詞・副詞の比較変化の場合は例外で、younger は /ˈjʌŋɡɚ/、strongest /ˈstrɒŋɡəst/ となる。

例外の中に更に例外があるということである。これはうるう年の現れ方と状況が似ている。つまり、西暦が4で割り切れる年はうるう年だが、その例外として100で割り切れる場合はうるう年ではない。しかしそれにも例外があり、400で割り切れる年はうるう年である。だから2000年は例外の例外としてうるう年になっている。西暦2000年前後に担当していた英語音声学の授業では、必ずこの話を添えていた。

英語の中で、<-ng> で終わる形容詞・副詞というと、long, strong, young, wrong で尽くされており、他のものは見当たらない。このうち、wrong に関しては迂言的に more, most を使った比較変化の方が普通である。

しかし、wronger, wrongest という形もない訳ではない。そして実は、これらの形の発音として、Merriam-Webster は /ɡ/ の入らない /ˈrɒŋɚ, ˈrɒŋəst/ という形を挙げている。

https://www.merriam-webster.com/dictionary/wrong

わずか4語しかない形容詞の比較変化のうち、wrong だけは例外ということだ。例外の例外の例外だ。

ところが、ついさっき聴いていたPodcast(The David Frum Show)に

“Something has gone terribly, terribly wrong and it’s getting wronger.” (4分37秒〜)

提供元: The David Frum Show: What the Neocons Got Right、2026年1月28日
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/the-david-frum-show/id1305908387?i=1000746963378&r=277
この作品は著作権で保護されている可能性があります。

という一節があり、ここでの wrong は /ˈrɒŋɡɚ/ と /ɡ/ を入れた発音になっていることに気がついた。

実は、研究社の『コンパスローズ英和辞典』の wrong のところには、比較変化 wronger, wrongest の発音として /ˈrɒŋɡɚ, ˈrɒŋɡəst/ が記載されている。この記述は Merriam-Webster のものと矛盾している。そして、僕が調べた限り、そのような記載をしている資料は見つからなかった。

実際はどうなのか。僕自身、比較級 wronger が実際に使われている例は、上記のPodcastで聞いたのが初めてである。Merriam が挙げているような /ɡ/ のない形は聞いたことがない。/ɡ/ が入った形の方が正しいのであれば、wrong の比較変化を形容詞の中の例外として扱う必要が無くなるという意味で話が単純になる一方、Merriam の記述に根拠がないとも思えない。僕が今回出会った発音の方が孤立した例外かもしれない。

それで、YouGlish を調べてみることにした。統計的な妥当性はないものの、どんな発音があるのかの実情の一端を見せてくれるのは確かだからである。

まずは比較級の wronger。2026年1月28日の時点では20例がヒットしている。

https://youglish.com/pronounce/wronger/english

それぞれの発音を見ると、

  1. gあり
  2. gなし
  3. gなし
  4. gあり
  5. gあり
  6. gなし
  7. gあり
  8. gあり
  9. gあり
  10. gあり
  11. gなし
  12. gなし
  13. gあり
  14. gあり
  15. gなし
  16. gなし
  17. gなし
  18. gあり
  19. gなし
  20. gなし

合計:あり10、なし10

となった。半々である。最上級の wrongest は5例のみだった。

https://youglish.com/pronounce/wrongest/english

  1. gあり
  2. gあり
  3. gあり
  4. gなし
  5. gなし

合計:あり3、なし2

これも半々と見て差し支えないだろう。

ということは、Merriam の記述にも問題があり、/ɡ/ の入らない発音と入る発音。両方記載するのが妥当ということになりそうだ。とはいえ、今回の「半々」という結果はたまたまで、Merriam としては /ɡ/ の入らない発音の方が普通だと判断する根拠があったのだろう。

『コンパスローズ英和辞典』の記述に関しては、恐らく、形容詞の比較変化では /ɡ/ が入るという法則を機械的に適用した結果なのではないかと思われる。YouGlish を調べた結果から考えると、結果的に「半分正しい」ことになったが、やはり /ɡ/ の入らない発音も追加する必要があるだろう。



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