『日本人のための英語音声学レッスン』(大修館書店)が増刷になりました。2005年に刊行されてからもう18年になりますが、これで通算第8刷です。大学向け教科書の位置づけなので、好きで購入した人ばかりではないのだと思いますが、ここまで刷を重ねることができているのは、そういう方々も含めて皆様のおかげです。ありがとうございます。
こんなに増刷を繰り返していても、そのたびに誤植が見つかって修正を余儀なくされているのがお恥ずかしい限りなのですが、それとは別に、増刷の機会に毎回ではありませんが読書案内に手を入れていました。
今回はその読書案内の手直しが、これまでで最も大きなものになったため、過去に本書を買ってくださった方々に向けてアップデートを提供するという目的で、この部分をこのブログで公開することを出版社から認めてもらいました。また、かつて運営していたWebサイト「英語音声学のページ」の読書案内を、古い内容のままこのブログに再録してあるのですが、それをアップデートするという意味合いもあります。
今回の増刷は『文レベルで徹底 英語発音トレーニング』(研究社)を出してから初めての機会ということで、当然これを載せました。理論的枠組を教えるための音声学の教科書では不足する練習のための材料を提供するのが『文レベル~』の目的の一つで、これまではその部分(【発音教本】の項)に洋書教材しか挙げられなかったのですが、ようやくその役割を果たす本を自分で出すことができました。しかし単なる従属的な練習材料という訳ではなく、むしろ『文レベル~』の方がプロソディーについては解説がかなり厚くなっていますので、『日本人のための~』をその意味でも補完する本であると言えます。
その他にも紹介する本をいくつも拡充していますが、逆に削除したものもあります。Ann Baker のShip or Sheep? がそれですが、これは僕の確認不足で、付属音声をよく聞いてみると、そもそも紹介すべき本ではなかったのでした。
何しろ、本のタイトルになっている /ɪ/ と /iː/ の対立が完全に長さだけによるものになっており、音質の違いが全くない音声(つまり [i] と [iː])なのです。英語母語話者が作った本で、しかも書名になっている区別でよもやそのようなことが起こっているとは予想だにできませんでした。それでも、やって然るべき確認を怠ったのは僕ですから、この点をはっきりさせる責任があります。
『日本人のための~』はアメリカ発音に絞った本で、Ship or Sheep? はイギリス発音を扱うという違いがあるとはいえ、いや、そうであるからこそ、過去の読書案内を見て、イギリス発音を練習したくてこの本を購入された方がかなりいらっしゃるのではないでしょうか。本当に申し訳なかったです。今回読書案内を公開することで、この点をお知らせする機会が得られたのが、僕にとってせめてもの救いです。
前置きが長くなってしまいましたので、読書案内自体は次の記事にします。
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